理事長からの挨拶

理事長からの挨拶

当法人は、平成5年に開設したメンタルクリニック・ダダをもとに平成7年12月に立ち上げました。現在では、常勤、非常勤合わせ200人を超える大所帯になりました。

クリニック開設までは、東京で入院治療に力を入れていました。もともと、治療において最も重要なことは、精神科に通院している子どもにも大人にも優しい、安心できる地域があるということだと思っていました。当時、入院治療を経て本当に成長し、人とのつながりができたと思った子どもたちが、退院すると容易に混乱することを目の当たりにし、東京での臨床の限界を感じました。治療そのものと地域の支える力は同等である、ときには地域の力の方が重要だと感じ、顔の見える関係で活動ができる浜松に戻りました。

当初、地域の臨床において、カウンセリングとデイケアは必須と考え、医師の診療と合わせ3本柱で始めました。また、医療だけでは、地域とのコラボレーション等が難しいと考え、福祉の枠組みを取り入れ、患者さんの地域生活を支えていきました。通院している子たちが次第に年を重ねていくにあたり、住居と就労が重要であると感じ、援護寮、生活支援センターに始まり、就労関連の事業を立ち上げ、現在では計画相談支援センター、児童発達支援センターを実施しています。

近年、精神的不調を経験し受診する人が増えています。我々は、生来性である発達のアンバランスと、その後の愛着の成長・情緒の成長、およびそれらを取り巻く家庭や社会の環境の影響の作用により、精神的不調としてあらわれるものだと考えております。

自分が生まれてきてどういうことが起きるのか、これからどうなるのか全く分からないまま、子ども達は生まれてきます。そこで、周囲の人々や自然といった環境とのやり取りや関りを経験することで『人』になっていきます。この『人』になる過程に、精神的不調に発展するもとが隠れています。それらを整理し再び前に進むための歩みに戻していく、あるいはしばらく混乱をおさめ再度この世に出ていく、そのための繭の役目もできればと思っています。

決して理想的な子育てを目指しているのではありません。辛さより救いのほうが少しでもいいから多くあればいいのです。今の時代は、子どもに諦めを多く強いている現状です。子どもたちは、ゲームをしたいのでも、理性的にしっかりした生き方をしたいのでもなく、気持ちが通じたり受け止めてもらったり、しっかりぶつかってもらったりしたいのです。関わりの根本には、守ってもらえるという感覚が大事です。安心からすべては発展していきます。また、医療部門、福祉部門の両方とも社会復帰や就労、訪問等を頑張っています。われわれからすると子どもの診療・臨床の延長です。30代、40代、50代の人の中にも、いつまでも心の中の子どもの部分が一生懸命成長している姿が見てとれます。苦労しながらも成長して社会の中で人と折れ合って、でも自分というものをしっかり持って生きていくということが希望です。

少しでも皆が社会の中で生きていけるようになればと念じ、活動しています。これは、精神的なハンディをもった個人の問題ではなく、共にその時を生きる社会全体の問題だと思っています。一見適応しているように見えても、無理をしたり、いびつな状況で生きている人を大勢見ます。それぞれの人が、『人』らしい生き方が出来るように、それぞれの分野で頑張っていければと思っています。


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